ご来院の際はご予約下さい TEL:054-637-2345

以前まだ若かった頃、大学の先輩に「静岡みたい田舎だとそんなに難しい治療しなくても歯医者をやっていけるからいいわね。」って言われたことがあります。
尊敬できる先輩でしたので、言われてちょっと悔しいと感じましたがそれは確かに事実でした。
田舎で流行る歯医者は、臨床的技術云々ではなく"優しい"とか"痛くない"とかで評価されてしまいがちだからです。
そして開業当時、患者さんの口腔内を見て感じたのは、「この地域の歯科治療は30年くらい遅れているなぁ」って言う事でした。
患者さんが歯科治療の事を知らなすぎる為、まともな治療をしようとするほど受け入れてもらえないような日々が続きました。
臨床的には、フルマウス(全顎的治療)で噛み合わせから治さなければ治せないような患者さんが多く、そのままではどんどん悪化してしまうのに、今痛むところだけ治してほしいと言われ、めちゃくちゃな噛み合わせのままその歯を被せるという不本意な治療になり、結果あとあと外傷で歯が折れて抜歯になってしまう事もよくありました。
勤務医の時には自由診療専門の歯科医院にも勤めていた為、それなりの知識や技術はありましたが、フルマウスの治療は普通にやれば数ヶ月〜数年掛かり、多いと数百万円の治療費になります。
しかし、保険治療が当たり前の地域の患者さんからすれば、"ボッタくり"歯医者のように見えるのでしょう。鼻で笑われてしまいます。
噛み合わせや力のバランス、歯の位置の問題から矯正治療を勧めても理解されず、歯周外科などをやろうとすれば「あそこは、歯医者なのにハグキを切るらしい!」と怪しまれ、インプラントも治療用の義歯さえも受け入れてもらえない雰囲気でした。
とにかく実績を作らなければ信用されないので、覚悟を決めて、都会の1/5〜1/10の料金で全顎治療をするしかありませんでした。(それでも高いというイメージだったと思います。)
不適な被せ物を外しては土台を外して病巣のある歯の根管治療をして歯石を取り、仮歯を作り、全部を仮歯に変えたら、噛み合わせを揃えて仮歯をもう一度作り直し、上下の歯の向きや位置が悪ければ矯正治療をして…というぐあいに。
他の歯医者は1本ずつ歯を治していくからすぐに治療費がもらえるのに、フルマウスの治療でも実績と信用がない為に先に料金ももらえず、泣きたいくらい大変な時期もありました。最初の頃は1年掛けて貯めた勤務医時代の貯金が1ヵ月の運転資金として消えていく状態でした。
保険治療のみで対処療法をするのは簡単だし、知識が無い患者さんが多いこの地域では、保険でも充分良い治療ができるとアピールすればもっと集患できて流行ったと思います。
でも、もうそんな事を言っていたら恥ずかしい時代になりました。
今までは周りの先生達に忖度していましたが、これからはちゃんと発言していきます。
特に重症な患者さんの場合、保険治療ではまともには治せませんよ!
最近インターネットが普及した事で様々な歯科治療の知識がやっと患者さんに伝わる時代になり、ようやく自分のして来た治療を理解してもらえるようになって来たと思います。
今、30代40代の歯科医師は当たり前のように歯周外科をやったり、治療用義歯を作ったりしますが、私達の世代がちょうど分岐点で今に繋がる治療の橋渡しだったのでしょう。
いずれにしても患者さんから信用されるという事はそんな簡単な事では無い事を知ってもらいたいと思います。
さらに、高い治療費をもらってフルマウスの治療をするような勤務医の場合は、自分がその土地に一生暮らして治療後の患者さんの管理をしていく覚悟を持ってもらいたいと思います。
フルマウス治療は治療が終わった時点がゴールではなく、そこからが患者さんにとっては本当のスタートなのですから…。

返信コメントを残す